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2012年のビールの出荷量に関して、対照的な二つの記事をご紹介します。
a) ビールが売れなくなったのは若者が飲まなくなったせいじゃない | 水谷IT支援事務所日記
b) 本当に2012年はビール出荷量が過去最低なのか? | 食で人をつなげるRIC経営研究所.
a のブログは、「ビール全体の売上が減少」と書いています。
b のブログは、「ビールの出荷量は2011年対比で2012年は増えている」と書いています。
全く逆のことを書いているわけですが、どちらの言っていることが正しいかは、内容を読めば一目瞭然です。
a のブログは、[ ビール酒造組合の発表した出荷量 ]
b のブログは、[ 国税庁の課税ビールの出荷数量 ]
どちらが「ビール全体の売上」でしょうか?
ちなみに、「ビール酒造組合」とは、大手五社(キリン・アサヒ・サントリー・サッポロ・オリオン)によって組織されたもので、この中には大手五社以外のメーカー(つまり、地ビールもしくはクラフトビールと呼ばれるものを造っているメーカー)、および大手五社以外のインポーターが扱ったビールが入っていません。
まあ、件の「水谷IT支援事務所日記」の記事の趣旨はそこにはないんでしょうが、こういう記事がニュースサイト経由で世間に広がると、いわゆる酒離れみたいな風潮に輪をかけるようなことになってしまうのではないか、と心配するわけですが…
でも実際に移出量が増えているのなら、その心配も杞憂と言えるのかもしれません。
今の需要増に応えるべく、醸造量を増やそうと画策しているメーカーは多いですし、実際に醸造設備を拡大して成功しているメーカーもあります。
新・額田醸造所 本格稼働開始 | 木内酒造
ただ、発信力のある人には、もうちょっと慎重なリサーチの下でモノを書いてほしい、とは思いました。
a のブログから2ちゃんのスレが立って、それがまとめサイトに取り上げられたりしてる訳ですし。
ビールの売り上げとビール大手の売り上げが、同じものじゃないのはおっしゃる通りですが、この二つのブログは比較対象とか論旨が違いすぎるので、単純に比較するのはどうかと思います。
aのブログの肝心なのは、この部分だと思います。
■ビール全体の売上が減少
ビール出荷量(売上)は1994年をピークに右肩下がりで減少しています。(中略)「ビール+発泡酒+第三のビール」を足しても売上はピーク時の70%しかありません。
約20年で3割の減少というのは相当なもので、過去に30年間で約半分に減少した日本酒に次ぐ凋落ぶりです。そして、こういった大づかみの分析をする場合、比較の資料は、国税庁でも大手5社でも、あまり変わりません。大手5社は、2012年段階でも国産輸入を含めて98%ていどのシェアを持っているからです。
対する bのブログですが、こちらのほうは、大手5社以外の数量を求めようとしたことは評価したいと思いますが、根拠にしている数値はあくまで速報値で、確定値との誤差は0.1%くらいは当たり前に出てきます。そうした数字をもとに全体の1~2%でしかない数字の伸び率を比較するのは、信頼性からいってかなり厳しいと思います。
国税庁が、大手5社以外の数値を出してくれれば、この問題はすぐに解消するのですが、なかなか使いやすい形では出てこないのが困ったところです。
単純比較というか、確かに仰る通りで、二つのブログの言いたいことが違いすぎるのはその通りだと思います。
ただ、aの記事を読んで違和感を感じたのは、やはり自分は地ビールベースのビール生活を送っている者なんだなあ、と。最近聞く話は「醸造が追いつかないwwwww」っていう悲鳴ばかりなので。
何より、aのような話を起点に、酒離れ現象をことさらに吹聴する輩が出てくるのがなんというかやりきれないというかですね。。。
とりあえず、国税には、発泡酒扱いも含めた「大手五社以外」の数値を出してほしいところですね。
取り上げていただき、ありがとうございます。
取り急ぎのため、失礼いたします。